キャンサーネットジャパン
 
第6回シンポジウム(2001年10月14日)第2部参考資料
がん医療の流れ

<治療目標による分類>
根治治療---腫瘍を完全になくすことを目指す治療
緩和医療---腫瘍とうまく長くつきあうことを目指す医療
    「うまく」:がんによる症状・治療による副作用で必要以上に苦しまない(症状緩和と小さい副作用)
    「長く」 :そういう時間をできるだけ長くすごす(有意義な延命)
<治療内容による分類>
積極的治療---腫瘍を直接攻撃する治療。手術、抗癌剤、放射線治療など。
支持的治療---腫瘍には影響を与えないが、腫瘍や治療に伴う不快な症状を緩和させる治療。

21世紀医療の二つの柱

EBM (エビデンス・ベースド・メディシン:「科学的根拠」に基づく医療)
HBM (ヒューマン・ベースド・メディシン:「人間」に基づく医療)

HBM(Human-Based Medicine: 人間の人間に拠る人間のための医療)
1、 医学の限界を知る
2、 生老病死と向き合う(「生命をコントロールする医学」から「いのちと向き合う医療」へ)
3、 医療は自分のものであるという自覚を持つ(医療に主体的に関わる)
4、 治療目標を明確にし、共有する
5、 最低限のエビデンスを共有する(エビデンスは共通言語)
6、 人間として語り合う
7、 人間の幸福を目指す

再発後の治療方針
<治療目標>
 「がんとうまく長くつきあう」
<効果判定>
  「効く」とはどういうことか? →患者さんと医者とがこの意味を共有する必要がある。
  エンドポイント(治療の目的・効果判定の指標)を何にするか?
根治? :達成は困難。
延命? :重要なエンドポイントであるが、一人の患者さんについては評価できない。
腫瘍縮小? :代理エンドポイントであり、最終目標ではない。
腫瘍マーカー? :代理エンドポイントの代理エンドポイントにすぎない。
症状緩和? :重要なエンドポイントであるが、あまり重視されていない。
幸福? :究極のエンドポイント。他人には決められない「その人なりの幸福」。
笑顔? :「幸福」の代理エンドポイント。
<多様な選択肢>
  「がんと闘わない」(近藤誠氏)
  「抗がん剤でがんに克つ」(平岩正樹氏)
  「がん休眠療法」(高橋豊氏)
  「日本のがん医療の本流・臨床試験至上主義」(がんセンター)
  「実験的医療(血管内治療、免疫治療、遺伝子治療)」
  「代替医療・民間療法」
  「EBM」(キャンサーネットジャパン)
  「HBM」(高野利実)
   →患者さんの自由意思で選択することが重要。
    (医者の考えを押し付けるのでは、「パターナリズム」の域を出ていない。)

<人生を大海原に例えるならば・・・>
・がんの患者さんは、荒波にもまれて大海原を漂っている状態。
・救命ボートがあれば、救命ボートを提供するのが医療の役割。
→救命ボートがないときにはどうすればよいか?
    医療の目的は、「溺れないようにサポートすること」
差し出した救命ボートの底に穴があいていたら・・・
これにつかまればいい、といって渡したものが一束のわらであったら・・・
     →結局はその人を溺れさせてしまう。
「荒波にもまれていても、けっして、溺れているわけではない」
     →目の前のわらにすがるのではなく、大海原全体を見渡して、あわてずに泳いでいけばよい。
      それをサポートするのが真の医療である