第3回シンポジウム(2000年9月3日)当日配布したレジュメ |
Cancer Net Japan主催
EBMシンポジウム
第3回
「医療を患者さんの手に取り戻すために」
〜いま、あなたにできること〜 |
<日時・場所>
2000年9月3日(日)
ゲートシティ大崎ウエストタワー1Fゲートシティホール D会議室 |
<プログラム>
12:30 開場
13:00〜13:15 ご挨拶
Cancer Net Japan代表 南雲 吉則 氏
13:15〜14:15 講演 「患者の立場から見たセカンドオピニオンの現状」
フリーライター 中濱 潤子 氏
14:15〜14:20 ビデオ企画趣旨説明
14:20〜14:40 ビデオ放映 「セカンドオピニオンを求めて」
14:40〜15:00 休憩、質問用紙回収
15:00〜17:00 パネルディスカッション |
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<企画趣旨>
Cancer Net Japanは、日本の医療をよりよくするために活動しているボランティア団体です。私たちのところには、連日、様々な相談が寄せられていますが、そこから垣間見る医療の現実は、ときに悲劇的ですらあります。医学や医療技術が高度に発展を遂げる中で、必ずしもそれが人々の幸せに結びついていないのはなぜでしょうか。
日本医療の最大の問題点は、主役であるはずの患者さんの存在があまりにも軽く扱われていることです。医療を変えるためには、まず、医療を患者さんの手に戻さなければいけません。患者さんやそのご家族が、主体的に医療に取り組む姿勢こそが医療のシステムを変えていくのです。
医療を患者さんの手に取り戻すために、何をすべきなのか、何ができるのか、ともに考え、実践していきましょう。
今回の企画では、「セカンドオピニオン」の現状について、フリーライターの中濱潤子さんの講演を聞いていただき、それから、Cancer Net Japan制作のビデオで、「セカンドオピニオン」の理想的なあり方についてご覧いただきたいと思います。現実と理想の間に立ちはだかる壁を浮き彫りにした上で、その壁をうち破るために何ができるのか、具体的な行動指針について議論したいと思います。
「いま、あなたにできること」を、それぞれにお考えいただき、明日から行動していただければ幸いです。
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講演
「患者の立場から見たセカンドオピニオンの現状」
フリーライター 中濱 潤子氏
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2年前に乳ガンが見つかって、治療してくれるドクターを探すのに、7軒の医療施設をまわりました。特に乳ガンは、ドクターにより治療法がバラバラなのと、いろいろなドクターの意見を比較検討することにより、自分に一番合った治療を受けたいと思ったからです。自分としてはごく自然な行動だったのですが、世間では「お医者様は神様。信じて従っていればまちがいない」「不安はあるけどドクターに気兼ねがあり、質問できない」と最初にかかったドクターに最後まで診てもらうという人が多いようです。
でも初めて会った人をどうしてそこまで信用できるのでしょう? 車や住宅など大きな買い物をする時には、とことん調べて買うのに、いちばん大事な自分のからだを預ける人を、すぐに決めてしまうの?と思うのです。
ドクターの側がセカンドオピニオンを歓迎しない土壌もあり、またセカンドオピニオンをしたくても、術後にむりなく通える、家族が見舞いに来やすいなどの理由で自宅に近いところを選ばざるを得ないなどの現状は、地方へ行くほど深刻です。また他の医師の意見を聞いたというだけで、主治医の機嫌を損ねるということもあるようです。今の段階では私自身がそうだったように、セカンドオピニオンというより、ドクターズショッピングにならざるを得ないわけですが、今後は医者、医療体制、患者の意識、この3つを改革していくことにより、よりよい医療を選べるようになれば、と思います。 |
<経歴>
中濱 潤子(なかはま じゅんこ)
フリーライター。1962年生まれ。
学習院大学文学部英米文学科卒。
卒業後、旅行、食などを中心に執筆活動を始める。学生時代にしばらくアメリカ・ニューヨーク州のアイリッシュ・アメリカンの家庭に滞在していたことから、アイルランドに強く魅かれるようになり、ここ5年ぐらいは年に数ヶ月をアイルランドで過ごしている。
著書にアイルランドのB&B(ベッド&ブレックファスト。民宿)のおかみさんたちのインタビュー集『アイルランドB&B紀行』(東京書籍)、クラフツ(手工芸品、道具)のつくり手を訪ねた『アイルランドの手ざわり』(NHK出版)。98年、温存療法で乳ガンの手術を受ける。その体験と医者を選ぶことの大切さを『乳ガン医師選択権』(小学館文庫)にまとめ、2000年3月上梓した。 |
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ビデオ
「セカンドオピニオンを求めて」
制作:Cancer Net Japan
監督:藤本直子
脚本:高野利実
出演:吉田和彦、岩瀬哲、山際光一、柴田幸司、高野利実、木谷哲 |
ある食道癌患者の物語です。この患者さんは、「ハルステッド病院」外科外来で食道癌を宣告され、手術のため入院しますが、入院してから、インターネット情報で、食道癌の標準治療が手術だけではないことを知り、「セカンドオピニオン」を求めて、「ジェダイ病院」を受診します。ジェダイ病院では、Tumor Board Conference(集学的がん症例検討会)と呼ばれる、各科の癌治療専門医による会議が開かれ、この患者さんの治療方針について話し合われます。そして、その結果に基づいて、患者さんに説明が行われます。
このビデオで描かれる「ハルステッド病院」の外科医は、誇張されてはいますが、ある意味、典型的な日本の「お医者様」です。「食道癌の治療は手術」と信じて、他の治療法のことは説明しません。一方、セカンドオピニオンを受けた「ジェダイ病院」では、Tumor Board Conference(集学的がん症例検討会)が開かれ、考え得る治療法についてくまなく検討が行われています。それぞれの治療の効果や合併症について、これまでの臨床試験で確立している事実に基づいて評価がなされるのです。無数にありえる治療法の中から、患者さんの利益が大きいと思われる「標準治療」をいくつか選び、それを患者さんに提示するわけですが、大事な点は、医者は、正確で公平な情報をわかりやすく伝えるだけで、最終的な決断は患者さんがするということです。
私たちは、ジェダイ病院のようなあり方が理想と考えます。
1. がん治療は、一つの科の一人の医師の意向で行うのではなく、各科の専門医が話し合って行う。
2. 治療の選択にあたっては、臨床試験で確立されたエビデンス(科学的根拠)が判断材料となる。
3. 患者さんは、正確で公平な情報を納得できるまで聞いた上で、自ら治療法を選択する。
残念ながら、このような病院は日本にはほとんどありません。こういう病院が一般化するためにはどうしたらいいのか、こういう病院が普通になるまでの間、どういう姿勢で医療に取り組むのがいいのか、このビデオをもとに話し合いたいと思います。
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パネルディスカッション
パネリスト
Cancer Net Japanボランティア医師
南雲吉則(ナグモクリニック院長)
青木幸昌(東大病院放射線科助教授)
鳥居伸一郎(鳥居泌尿器科・内科院長)
岩瀬哲(東大病院放射線科)
荒井和子(東京都立豊島病院緩和ケア科)
柴田幸司(東大病院放射線科)
藤本直子(関東労災病院放射線科)
木谷哲(東大病院放射線科)
患者代表
中濱潤子(フリーライター)
望月菊枝(Cancer Net Japanボランティア)
司会
高野利実(東京共済病院内科)
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※アンケート内容に基づいて進行していきます。フロアからの積極的な参加を期待します。
1. 医療システムの問題点
理想と現実の間の壁、患者さんと医者の間の壁
2. 医療をよりよくするために
医者のすべきこと、患者さんのすべきこと、 |
EBMとは?
EBM= Evidence-Based Medicine、日本語にすると「エビデンス(科学的根拠)に基づく医療」。患者さんも医者も、「エビデンス」の知識を持ち、それに基づいて話し合い、治療方針を決めていくというのが、EBMです。医療の明確な根拠を、医者だけでなく患者さんも共有できるというのが重要な点です。明確な根拠なくいいかげんに行われてきた医療を根本からひっくり返す革命的な概念だと言えるでしょう。
セカンドオピニオンとは?
本当にこの診断でいいの?治療法は妥当なの? 医療を納得して受けるために、初診医とは別の医師から情報や意見を聞くことを、セカンドオピニオンと言います。セカンドオピニオンは、答えを求めて、延々とたくさんの病院を渡り歩くことではありません。診療科の垣根をこえて、患者さんに一番適切な医療を選択できるように、異なる専門医どうしが連携して1人の患者さんについて意見を交し合うことが理想です。
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